ユウウツな子育て

福岡の小1男児殺害事件で母親が逮捕されたのは昨日9月22日月曜日。
「ああ、やっぱり」そう感じた女性は多かったのじゃないだろうか。

この事件は報道されたときから不審な点が多かった。私は母親の可能性を感じたが、軽々に口にできることではなかった。
気の重くなる事件だし、その犯人が母親となるとなおさらだ。まわりでこの事件が話題になっても、だんまりを決め込んでいた。

母親が逮捕される前日、私がたまたま入った焼肉やさんで(湯来町の地元の人達のたまり場のようなお店)
ランチタイムにもかかわらず、3人の熟年女性がビールを飲んでいた。
アルコールの勢いもあって、口が軽い。次から次へおしゃべりは続く。
誰とはなく、「福岡の男の子、あれは母親がやったんだよ。」みんなうなずく。
ああ、この人達もそう思っているんだ。子育てのしんどさを経験した女性なら、わかるんだ。


私は長年、友人の子育て中の愚痴に電話で付き合ってきた。児童虐待がまだそれほど報道されていない頃。
彼女は延々と電話でしゃべり続けるのだ。私はため息をつきながら聞くしかない。
そして、彼女の代わりに、幼稚園やご近所や社会に対して怒った。
彼女の息子はまわりの子どもたちとは随分違っていた。全く集団になじまない子だった。
幼稚園や学校の先生たちやご近所の人達は、「母親のしつけが悪い!」と、
彼女を随分と非難し、また、とんでもない要求を突きつけてくるのだ。
夫はといえば、彼も随分変わった人で、学校の先生たちとは全く逆の子育てをする人だった。
その頃の彼女の電話口での口癖は「いつこの子を殺してしまうか、わからん」冗談などではなかった。
「今日は階段の上から突き落とした。」「包丁を片手に子どもと話をする。」
自分の手に負えない子どもにイラつき、まわりからはダメ母親と非難され、はずみで子どもを殺しかねない、
危うい精神状態だったのだ。

そんな彼女の気持ちが楽になったのは、息子が中学生になったとき。アスペルガー症候群と診断されたのだ。

彼女のしつけが悪いのではなかった。息子の脳が思考回路が他人と違いすぎるのだ。
そうわかったとき、彼女はどれほど肩の荷が降りたことか!こんなにうれしかったことはない、と、彼女はよく言う。

ところで、アスペルガーって、何よ?一生懸命勉強した彼女の説明を聞いて私は笑った。
「それって、あなたのことじゃない。」「そうなのよ!私もアスペルガーよ」

彼女と私は小、中、高といっしょで、なぜかつかず離れず、気の合う幼馴染だ。
確かに、彼女は子どもの頃からかなり変わった子、というイメージが強かった。
おもしろいんだけど、スポーツで一緒のチームになると最悪。
一緒に旅行したときは、私のほうが我慢できなくなって「うるさい!黙れ!」と、怒鳴ったこともある。
アスペルガーってのは、少々コミュニケーションとるのが難しいこともあるようだ。
しかし、これだけ長年付き合えるのは彼女に魅力があるからだ。世間体よりも自分の感覚に正直なので、お互いにいっしょにいると楽しい。


話がずれてしまったが、周りの子どもたちとは違う(強い個性といえばいいだろうか)子どもを持つ親は
今回の福岡の事件を、他人事とは思えない気持ちでみているかもしれない。しかも、この母親は病気を抱えているという。
健康な私でさえ、疲れたときに子どもにまとわりつかれると、イライラが増大し、手を上げたくなったものだ。

昔なら他人とずれていてもひどいいじめが起きることもなく、それほどの問題はなかった。(本人はしんどかっただろうが)
最近は、ちょっとのずれも許さないようなところがある。福岡の子殺しの母親にも相当のストレスがたまっていただろう。
母親を孤立させない地域社会をどうつくればいいのだろう。



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